新型コロナウイルスの感染拡大において、暑い夏にもマスクを着用せざるを得ない事態となっています。
直射日光の影響が強い夏でも快適に着用できるマスクが販売され始めていますが、果たしてマスクは暑さ対策になるのでしょうか?
今回は、マスクが暑さ対策になるのかどうかを理解できるよう、熱の種類や暑さを和らげるマスクの生地の仕組みなどを解説します。夏にマスクを着用するときの注意点にも触れているので、見落としなくチェックしてくださいね!
暑い夏にマスクを着用するときに知っておきたい熱の種類
初夏にマスクを着用すると、涼しく感じることがあります。マスクは暑さ対策になるのでしょうか? その答えを知るには熱の種類について理解しておく必要があります。マスクを着用するときに知っておきたい熱の種類を解説していきます!
種類1.輻射熱(放射熱)
輻射熱(放射熱)とは、温度の高い物体から発生する電磁波によって伝播する熱です。放射熱を発する物体は、接触しない遠距離の対象に熱をもたらします。
輻射熱の発生源として挙げられるのが太陽です。太陽からは赤外線や紫外線などを含む電磁波が太陽光として地球へ放出されます。最終的に人や地面などが直射日光から熱を吸収します。
電磁波は空気やガラスなどを透過するので、対策を講じないと部屋の床で熱が発生し、部屋全体が暑くなってしまいます。
種類2.伝導熱
伝導熱とは、高温部から低温部に移動する熱です。接触する物体同士の温度が均等になると熱の移動が止まります。
たとえば、冷たい缶ジュースを手で持ち続けていると、手が徐々に冷たくなるとともに、最終的にジュースがぬるくなっていきます。
温度の高い手から温度の低いジュースに熱が移動することによる温度変化です。
種類3.対流熱
対流熱とは、空気や液体などの流体によって運ばれる熱です。
たとえば、ろうそくに火をともすと、炎で温められた空気は上に移動します。家の中では、温かい空気が上にたまりやすいので、1階よりも2階の温度が高いと感じやすいです。
そのほか、お風呂を湧かしたときに湯船の底が冷たく感じることがあるのも対流熱が原因です。
種類4.気化熱
気化は、液体が気体に状態変化する現象です。気化の意味がわかると、気化熱の意味もわかってきます。
気化熱とは、液体が気化するときに周囲から奪われる熱です。
たとえば、真夏に家の前の地面に水をまくと、水が蒸発するときに地面の熱が気化熱として奪われるので、周辺が涼しくなります。
注射をするときも気化熱を感じるシーンの一つです。看護婦さんがアルコールを含ませた綿で腕を拭くと、アルコールが蒸発するときに腕の熱が吸収され、ひんやりと感じます。
マスクを着用しているときの暑さを和らげる生地
直射日光のあたる屋外では、マスクも電磁波の影響を受けて輻射熱が吸収されます。
その点、遮熱効果のある生地を用いたマスクは、赤外線を反射して温度の上昇を抑えられます。
また、最近では接触冷感加工がなされたマスクも珍しくなくなりました。
- 接触冷感加工は伝導熱の特徴を活かした技術です。肌が触れた場所から熱を逃がしてくれるので冷たく感じます。
- また、気化熱の特徴を活かした技術として、キシリトール加工もあります。キシリトールが汗とくっついたときに熱を吸収・放出してくれるため、ひんやりと感じます。
つまり、遮熱効果のある生地や接触冷感加工された生地、キシリトール加工された生地などを用いたマスクであれば暑さを和らげやすいです。
夏にマスクを着用するのは暑いから嫌だと感じる方は、遮熱効果・接触冷感、キシリトール加工などのキーワードに着目してマスクを選ぶとよいでしょう。
暑い夏にマスクを着用するときの注意点
ここまでの説明で、マスクは夏用の生地を選べば、直射日光による暑さを和らげられるとおわかりいただけたと思います。
ただ、夏用の生地を用いたマスクを着用すれば、暑さを気にしなくて済むわけではない点に注意が必要です。
というのも、マスクを着用していても、体温の増加は避けられないからです。
たしかにマスクは、顔にあたる直射日光による温度の上昇を防げます。しかし、太陽光は地面にあたり、輻射熱を吸収した地面が新たな熱源となり、輻射熱や伝導熱によって体の温度を上昇させます。
当たり前ですが、マスクを着用したところで体の温度は調整できません。体温が上がってしまえば、結果として顔周りの温度も上がってしまうでしょう。
厚生労働省は、マスクの着用によって熱中症のリスクが高まるという見解を示しています。結論として、暑い夏にマスクを着用するのは、あまり望ましくないということです。
しかし、新型コロナウイルスの対策をするにはマスクの着用が必要です。
マスクを着用するときは、涼しい服装にしたり、水分補給をこまめに行ったり、高負荷の作業・運動を避けたりするようにしましょう。
参考:熱中症予防×コロナ感染防止(厚生労働省)
真夏のマスク着用では遮断性と通気性を意識する
真夏にマスクを着用するときには、遮断性と通気性を意識してマスクを使い分けることが重要です。
遮断性が高いマスクだと感染を防ぎやすいですが、息苦しくなり体温が上昇しやすくなります。その一方で、通気性が高いマスクだと熱がこもりにくくなりますが、遮断性が低くなります。
通勤時のバスや電車ないでは遮断性の高いマスクを選び、ソーシャルディスタンスを保てる環境では通気性の高いマスクを選ぶようにしましょう。
参考としてマスクの種類ごとに遮断性・通気性の違いをまとめてみます。
ウレタンマスク | ガーゼマスク・布マスク | 不織布マスク | |
---|---|---|---|
遮断性 | 低い ↔ 高い | ||
通気性 | 高い ↔ 低い |
まとめ
今回は、熱の種類をおさらいしつつ、暑さを和らげるマスクの生地や、夏にマスクを着用するときの注意点を解説しました。
熱には輻射熱・伝導熱・対流熱・気化熱などのさまざまな種類があります。
それぞれの熱の性質を利用して、暑さを和らげるマスクが開発されていることが、おわかりいただけたでしょう。
それと同時に、マスクだけでは地面からの熱によって体温が増加してしまうことも、おわかりいただけたと思います。
熱中症の観点からは、夏にマスクを着用するのはあまり望ましくありません。あくまで夏にマスクを着用するときは、服装・水分補給・休憩などに関する熱中症対策を欠かさないようにしましょう。
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